INTERNATIONAL
SOMMERAKADEMIE
UNIVERSITAT
MOZARTEUM
SALZBURG
(2)

*8/23* 練習室の話 と コンサートで学んだこと
*8/24* 
パーティー
*8/26* 
最終日
*8/27* 
お別れ

前半に戻る

 

mercredi 23 aout 2000

◆練習室の話 と コンサートで学んだこと

ずっと書くのを忘れていたけど、ここの練習室はすごい。
モーツァルテウムの中の練習室をそのまま使わせてもらっているのだが、
どの部屋へ行ってもスタインウェイかベーゼンドルファー。そして全館・全室エアコン付き!
なんてことでしょう!!
初めて名前を聞くようなメーカーのピアノがいっぱい置いてあるパリ音楽院の練習室とは比べ物にならん。

練習はひとり一日3時間ずつ好きな時間を予約するようになっていて、
その他の時間でも部屋が空いていれば使ってよいというシステムになっている。
私は毎日1時から4時までまとめて3時間予約した。
3時間ぶっ通しで集中してるのはつらいかな、とはじめは思ったけど、
いざやってみるとこのようにして正解だった。
時間に余裕があるというのは自分の気持ちにも余裕ができて、
まずやらなければならない曲をさらったあと、新しい曲を譜読みしたりする時間もできる。
しかも、私の時間のあと、4時からこの部屋を予約してる人はいないらしく、
毎日5時過ぎまで、気分が乗っているときは5時半、6時までさらえている。
ピアノもスタインウェイだし、割とラッキーなのかも♪

 

そうだ、昨日のコンサート、私はまたちょっと勉強した。演奏ではなく、他のことで。
というのは、私の前に10歳ぐらいの、もう見た目からして小さくてかわいい外人の男の子がカルメン・ファンタジーを熱演したのだ。
すごいテンポで(笑)。
もちろんお客さんは熱狂。ブラボーの嵐。。。
-------私は数日前の、このアカデミーコンサートを聴きに行っていて思ったことがあった。
これまた10歳ぐらいのかわいい子どもがヴァイオリンを弾き、客を熱狂させた。
私も「すごい!」と思って感激していた。
その子は4回ぐらい舞台に出てきて挨拶をし、一応拍手はおさまった。
けど、やっぱりお客の興奮はそうすぐにはおさまらない。私もそうだった。
余韻にひたっている間もなく、すぐ次のピアニストが出てきてしまった。それはけっこう大人の人。
なんとなく、こころもちがっかりした感じがしたのだ。
というか、ただ自分の気持ちを切り替える時間がなかっただけの話なんだと思うけど、
出てきた瞬間、なんだ・・・今度はおっきな人か・・・という印象を持ってしまった。
その人は上手なピアニストで、聴いてるうちにのめりこんでいき、最終的にはまた拍手の嵐となったが、
出てきた瞬間の印象が悪いのは損だと思ったのだ。
私の前に演奏する子がこんなに小さい子だとわかった瞬間、このことを思い出した。
そしてやはり彼もすごい演奏をしたので、予想通りブラボーの嵐。
5回ぐらい出て行ってやっと拍手がおさまった。
でも、お客の気持ちを切り替える時間が必要だと考え、予定通り、しばらく間をおかせてもらったのだ。
1分弱待って、会場のざわめきが静まったのを確認してから「じゃあ、行きます」と言って出た。
「今度はねーちゃんか・・・」というお客さんの落ち込みは感じなかった。
ちゃんと次の人用に気持ちを切り替えてくれていたと思う。
あとから友達の話を聞いたら、これは正解だったようだ。
それまで小さい男の子が立っていたステージから一変して大人のステージになった、と言ってくれた。
演奏とともに、その周辺に対する配慮も大人になっていかなきゃいけないな。
いい経験をしたと思う。

topへ

indexへ

 

jeudi 24 aout 2000

◆パーティー

夜、デル=ヴィーニュ先生クラスのパーティーがあった。
先生がローマでも教えてらっしゃるせいだと思うけど、どうも今回のこの講習、うちのクラスはイタリア人がやたら多かった。
パーティーもまるっきりイタリアンのペースで進められていった。
総勢40名ぐらいが集まり、大きな鍋に作られたトマトソースのパスタをいただき、デザートの手作りケーキを食べ終わると、
生徒の一人であるイタリア人のにーちゃんが、すっばらしい声でカンツォーネを歌い始めた。
おしゃべりでにぎわっていた会場がしーんと静まり、彼の歌に聴き入る。
それが終わると、今度は置いてあったピアノが始動。
伴奏付きでカンツォーネの有名どころを歌うと、会場中で合唱が始まった。
参加者のほとんどがイタリア人だから、みんないい気分で歌い上げる。
歌えない私たち日本人勢はそれを聴いて楽しむしかなかった。
つぎつぎ聞いたことがある歌が歌い上げられていき、間にダンスが入ったり、かなり盛り上がってきた。
デル=ヴィーニュ先生も、もともと調子が良く明るい人なので、みんなと一緒になって喜んでいる。
なんかその笑顔を見てるとこっちまで嬉しくなってしまう。
レッスン中は厳しい顔をするけど、終わるとすぐニコッとしてやさしいおじちゃんになる、とってもいい先生だ。

パーティーも終盤にさしかかり、みんなの盛り上がりもかなりのものになってきた。
すると、それまで歌っていたイタリア人たちが、日本の歌を歌ってくれ、と言いに来た。
確かに日本人は全部で10人ちかくいたから、もしかしたらそのうちそういう話になるのでは、と少し思っていたんだけど。
こんだけ盛り上がってるとやらないわけにはいかない。
私たちは全員で前に出て、ゆうや〜けこやけ〜の 赤とんぼ〜 を歌った。
私はラクなところで伴奏役にまわったんだけど♪歌詞わからんかったし。。。
みんなすごくちゃんと聴いてくれて、「きれいな曲だね」と言ってくれた。
しかし、こういう場ではどういう歌が喜ばれるんだろう??・・・日本のうた、日本のうた。。。
いざというときのために普段から何か決めておくといいんだろうけど。

そのあと、参加者の中のひとりが誕生日だったらしく、みんなでハッピーバースデーを合唱。
ピアノを弾いていたイタリア人の男の子に向かってみんなが、
今彼が勉強しているブラームスのパガニーニ・バリエーションを弾け、弾けと言うと、
彼はおちゃらけてまたハッピーバースデーを弾く。するとイタリア人のひとりが「それがテーマね。」と叫んだ。
その一言がきっかけとなり、彼はパガニーニバリエーション風にハッピーバースデーを変奏していった。
特徴をよくつかんでいるうまい変奏で、私は彼の即興力に感心した。
パガニーニバリエーション風を2〜3こやると、誰かが「ベートーヴェン!」と叫ぶ。
するとすぐベートーヴェン風に低音のオクターブを使ったりして変奏した。
勢いづいて次々リクエストが出る。モーツァルト、バッハ、ドビュッシー、ショパン、チャイコフスキー、ムソルグスキー、ピアソラなど
どんどん言っていったのだが、彼は一瞬もためらうことなく次々こなしていった。
ほんとにすごい才能だと思う。いろんなハッピーバースデーが聴けて、ほんとに楽しかった。

夜9時に始まったパーティーは夜中1時まで続いた。
最後にそれぞれ写真撮影をしたり、住所交換をしたりして、ようやく帰路についた。
長いと思っていた2週間の講習もあと2日を残すだけ。。。

topへ

indexへ

 

samedi 26 aout 2000

◆最終日

最後にかたまって連日入っていたレッスンでは、ようやくアルベニスとお別れし、ショパンの2番ソナタをみていただいた。
あ〜・・・あんなに重たいベートーヴェンの楽譜やらなんやらいっぱい持ってきたのに、
結局必要だったのはアルベニスとショパンだけ・・・ま、人生こんなもんよね。。。
先生はショパンもお好きなようで、暗譜でバリバリ弾きながらレッスンしてくださった。

最後のレッスンを午後3時ごろ終え、ようやく自由の身となって観光に出かけた。
といっても、夜ファイナルコンサートがあったからそんなにゆっくりはできない、ということで、
街の小高い丘の上にある「ホーエン・ザルツブルグ城に登る」ことに的をしぼった。
たいした距離ではないんだけど、かなり急な坂道を徒歩で登った。
ケーブルカーもあったんだけど、日ごろの運動不足を考えて、歩いて登ることに決めたのだ。
しかし、ほんとに運動不足らしい。。。半分ぐらいまで行くとハーハー言って、登る速度が急激に落ちた。
やばい・・・こんなかわいい丘に登るのにこんな状態になってちゃ・・・・・。
お城までたどり着くと、そこには絵はがきでよく見たザルツブルグの街全体の美しい風景が広がっていた。
ザルツァッハ川がきれいな曲線を描いていて、教会や塔など美しい建物がいっぱい並んでいる。

まだ時間があったので、下りの途中にあるビア・ガーデンでビールを1杯。山登りして暑くなっていたからすっごくおいしかった!!

しばらくその店で風景を楽しみながら友達と語り合い、酔いを覚ましてからコンサート会場へ向かった。

   

↑あんなに高いところにあるお城 と そこに登って見たザルツの町

 

今日のホールは、いつもアカデミーコンサートをやるウィーナー・ザールとは違って、
同じ旧モーツァルテウム内だか、隣接してるんだかの大ホール。きれいなホールだった。

でも音の聞こえ方はちょっといまいちだった。設計上の問題だと思うけど・・・。
このファイナル・コンサートに出演したのは計6人。
ピアノ3人とヴァイオリン2人、あと1人はバリトンだった。
このコンサートでは年齢というものを考えさせられた。
10代の演奏と20代の演奏では確実に何かが違った。この差は特にヴァイオリンで感じた。
10代はほんとに若さがあふれている。勢いがあり、
もちろん優秀な人たちだからテクニックもバッチリ。
だからお客さんも喜んで拍手を送る。

でも、後半で20代の演奏を聴くと、やっぱり違うのだ。
音色の変化、音楽の深みなどにこだわりが感じられる。
落ち着きがあって、聴いてる側も安心して「音楽」を楽しめる。
これは日本の須田先生のお話にもあったことだが、10代ですばらしいとされていたことは、
もう20代では通用しない。
テクニックを全面に見せて喝采を受けていた時代はもう終わりで、
これからはそれは隠しておいて、音楽を聴かせることをしなくてはいけないのだ。
ほんとに音楽というのは果てしない・・・。偉大なものなんだ。。。

topへ

indexへ

 

dimanche 27 aout 2000

◆お別れ

長かった2週間の講習会も無事終了。
なかなか充実した講習会だったと思う。

はて、空港までどうやって行くのか。
日本に帰るとき用の大きいスーツケースを持ってきているものだから、中身はそんなに入っていないにしても持ち運びはけっこう大変。
やっぱりタクシーかな。
タクシーを呼ぶ番号は昨日のうちに友達に教えてもらっていたから、荷造りを終えて電話をかけようとすると、
なんと電話が使えなくなっておる・・・!
金曜日に清算した時点でこちらからかけることができなくなっていたのだ・・・。知らなかった・・・。
仕方ないからどこか電話ボックスまで荷物をゴロゴロ転がして行こう、、、しかし、この寮の辺はほんとにさびれてるから、
電話ボックス・・・一番近いのは練習場のあたりかもしれない・・・。ここから大荷物を転がしていくには遠いなぁ〜。。。と悩んでいるところに
この講習で何かと縁のあったヴィクトール君が登場。
彼も今日帰るのだが、一応彼の部屋の電話も試してもらったけどやっぱりダメ。
すると、なんと気の利くことに、彼は、隣の部屋で、もうそこに暮らしているという人と友達になっていたのだ。
まだ午前中の早い時間だったけど、起こして電話を試させてもらった。さすがに住んでる人の部屋からは通じた!
そんでもってヴィクトール君はドイツ語がしゃべれるからスラスラとタクシー1台をお願いしてくれた。
一件落着!!
ほんとに今回は最初も最後も彼にお世話になってしまった。
いいお友達ができてよかった♪

タクシーはすぐ来て、ヴィクトール君にお礼とお別れを言う。泣くかな〜と思ったけど涙は出てこなかった。
私は別れに弱いはずなのにおかしいなあ。
よく通った中心街を通り抜けてタクシーは空港へ向かって走り出した。
車内ではラジオからバック・ストリート・ボーイズのバラードが流れてて、
今日までのいろんなことを思い出しながら窓の外に流れる景色をながめてたら、ちょっと「うるっ」ときた。

こじんまりとまとまったかわいい街で、バスがよく走ってるから動きやすく、コンサートもいっぱいあるし、
なかなかおすすめの講習会だった。また機会があったら行きたいな。
今度はちゃんと鍋を持っていこう・・・。


topへ

(1)へ